「もしアパートを借りるなら、娘たちが気軽に来られる場所がいいな」
今思えば、アパート探しのスタート地点にいた私は、“自分のため”と言いながら、まだ誰かのことを優先していた気がします。
家を出るわけじゃない。離婚するわけでもない。完全な別居でもない。
でも、家の中にいると息が詰まる時がある。
母親でも、妻でもなくて、ただの私として静かに過ごせる場所が欲しかった。
そんな思いから始まったアパート探し。
今振り返ると、それは物件を探す旅というより、自分の気持ちを探す旅だったのかもしれません。
① 娘たちが来られる場所を目指して、3LDK探しからスタート

最初に考えたのは3LDKでした。
娘たちが学校帰りに寄れる場所。
休日に遊びに来られる場所。
泊まろうと思えば泊まれる場所。
そんな未来を勝手に想像していました。
私の中では「お母さんの家」として考えていたんでしょうね。
だから広さ重視。
一人で暮らすには広すぎるくらいだけど、「娘たちが来るかもしれない」を基準に考えていました。
そして探してみると、古めのアパートなら家賃5万円前後。
「えっ、思ったより安い」
ちょっとテンションが上がりました。
現実味が出てきた気がしたんです。
でも、実際に内見してみると、頭の中のイメージとはかなり違いました。
② 家賃5万円の落とし穴。「安い=お得」じゃなかった現実
部屋に入った瞬間、なんとなく空気が重い。
古い建物独特の匂い。
壁紙の使用感。
水回りの年季。
そして気になったカビ。
さらに追い打ち。
「エアコンは付いてないので、ご自身で設置になります」
……え?
ちょっと待って。
家賃5万円だからお得だと思っていたのに。
エアコン代。
設置工事。
家具。
家電。
カーテン。
照明。
生活を始めるためのお金が次々増えていく。
頭の中で計算し始めた私は、途中から現実に戻りました。
「あれ?安くないじゃん」
家賃だけで見ていたらダメなんだ。
今まで実家暮らしや家族との生活が長かった私は、住むってもっと大きな話なんだと気づきました。
結局、その物件は諦めました。
条件は悪くなかった。
でも、ここから生活を立ち上げるエネルギーが今の私には重かった。
今思うと、無理して契約しなくて良かったと思っています。
③ 家具家電付きの救世主?レオパレスに心が傾いた日
次に候補に出てきたのがレオパレス。
家具家電付き。
すぐ生活開始可能。
まるで住むためのスターターキット。
「これ最高じゃない?」
正直かなり惹かれました。
私が欲しかったのは、おしゃれな家じゃなくて、すぐに休める場所。
疲れている時って、ゼロから作る気力がないんですよね。
だから最初から生活が完成している感じが、とても魅力的でした。
ところが近所は空きなし。
やっと見つけたのは、自転車で20分ほどの場所。
微妙に遠い。
でも条件は悪くない。
見積書まで作ってもらいました。
なんとなく、その部屋で暮らしている自分まで想像していました。
ところが。
ここから信じられない事件が起きます。
④ そして私はやらかした。申し込み忘れ事件
なんと私。
申し込みの話をするのを忘れました。
忘れる?
そんなことある?
私もあとで思いました。
なんで!?って。
たぶん、その時の私は慣れない部屋探しにいっぱいいっぱいだったんです。
見積もりを出してもらって安心してしまった。
終わった気になっていた。
そして気づいた頃には、見積書の期限切れ。
終了。
再募集。
え、待って待って待って。
そんなに早いの!?
不動産の世界は本当に早い。
びっくりするくらい早い。
⑤ 空いていた部屋が、誰かの未来になった瞬間
そしてもっと驚いたのは、その後でした。
再募集されたと思ったら、あっという間に別の申込者が現れたんです。
ほんの少し前まで空いていた部屋。
数日前まで「ご案内できますよ」って存在していた部屋。
それが急に誰かの暮らしの場所になる。
不思議でした。
そして少し悔しかった。
あの時ちゃんと申し込んでいたらどうなっていたかな。
そんなことも思いました。
でも今ならわかります。
縁がなかった部屋って、あるんですよね。
無理やり追いかけても、するっと逃げていく。
逆に縁があるものは、不思議なくらい繋がる。
この時はまだ知らなかったけれど、私にはちゃんと別の部屋が待っていました。
⑥ 「娘のため」から「私のため」へ。探す理由が変わった

何度か探して、考えて、迷って。
ある時ふと気づきました。
あれ?
私、本当に欲しいもの何だっけ?
娘たちが来る場所?
もちろん来てくれたら嬉しい。
でも、一番欲しかったものは違った。
私は私が安心できる場所が欲しかった。
静かに座って。
誰にも気を使わず。
好きなものを見て。
ただぼーっとできる場所。
そこに気づいた瞬間、部屋探しの条件が変わりました。
広さより、安心感。
家族のためより、自分のため。
たぶん、この瞬間が一番大きかったと思います。
⑦ 奇跡みたいに現れた、職場徒歩圏の築浅アパート
そしてその後。
奇跡みたいに見つけました。
職場から歩ける距離。
しかも築浅。
え?
待って。
そんな都合良い話ある?
急いで不動産屋さんへ連絡。
しかも偶然、そのお店は最初の内見でお世話になったお店。
「あれ?また会いましたね」
なんだか不思議な再会でした。
ただ、その時点ではまだ入居中。
内見はできません。
普通なら迷うかもしれない。
でも私は迷いませんでした。
条件が良すぎたんです。
もうここだと思いました。
⑧ 広さじゃなかった。私が欲しかった“聖域”
29㎡の1K。
数字だけ見ると決して広くありません。
家族向けなら狭いと思います。
でも私には十分でした。
むしろちょうど良かった。
ここは家族のための部屋じゃない。
誰かの期待に応える場所でもない。
ただ、自分を休ませるための場所。
ドアを閉めた瞬間だけは、お母さんでも奥さんでもなくていい。
ただの私になれる場所。
遠回りしたアパート探しだったけれど、結局探していたのは部屋じゃなくて、自分の居場所だったのかもしれません。
完璧な正解なんてない。
でも、この小さな部屋で少しずつ、自分の輪郭を取り戻しています。